努力信仰は摺り込まれてきた
採用業務では多くの学生に接し、教育・研修では多くの新入社員に接し、支店長時代も毎年新入社員を受け入れていました
大卒の新入社員などは『3億円のコスト』と呼ばれ、高卒や専門学校も『2億円のコスト』と呼ばれています
何もスキルもない若いだけの学生ですが、生涯会社が払う賃金は億単位なのです
従って『育成する』→『稼げるようにする』は非常に重要になってきます
若者からすれば「学校はこちらがお金を払っていたから丁寧に教えてくれたが、会社ではお金をもらいながら教えてもらうのだから、早く使い物にならなければならない」と必死に成長しようとします
私も若手の育成では「努力は大切」「頑張る姿は美しい」「挑戦することは重要」というスタンスをとってきましたが、実はこれは正解ではありません

成功のストーリーは美化されている
「努力は報われる」と信じている人は多いと思いますが、その考えは極めて危険です
この考え方は生存バイアスに支配された間違った考え方で、私も研修では同期社員の成功事例などをよく取り上げてました
聞く方としては「どうやってあんな実績を上げたんだろう?」と興味があるし、話す方も自己肯定感が上がりモチベーションアップにつながります
世の中にこれだけの成功例のビジネス書が出ているのに、成功者が少ないのは『成功のストーリーは美化されている』からだと思います
高年収の人は「実は運が半分以上を占める」と知っています
東大生の親の42.5%が年収は1000万円以上です
親も高学歴で、教育費に多くのお金を使ってきた親で、環境的に恵まれているといえます
この時点でフェアな勝負ではありませんが「努力の差だ!」と強調されます
恵まれた環境は隠蔽され「努力した」「挑戦した」という部分のみ表面化しているのが現実です

努力信仰は思考停止装置
圧倒的な営業実績のある2年目の社員に研修で講師をしてもらおうと話しを聞いたところ、非常に正直な若者で「先輩が支店長に昇進して転勤する時に良質な顧客を僕に引き継いでくれたんです!他の同期は新規顧客を必死に作っている時に、僕は労せずにその顧客で数字を上げることができました」と語ってくれました
「僕からすれば、新規顧客を創っている同期の話を聞きたいくらいです」とのこと
このように「自分が良かったのは環境によるもので努力でも能力でもない」と語る社員もいますが、大半の人は美化します
このように成功例や努力を美化したポジティブ思考を強要した企業の研修により、人は出来ない自分を責め続け、自己肯定感は下がります
「やればできる」と摺り込まれ続けるとできない自分を責め続けるようになり、努力信仰が摺り込まれ真面目に働く人ほど会社組織に搾取されやすくなります
「挑戦することが大事だ」「俺は知れで成功した」と言われますが、よく挑戦する人ほど失敗した時のセーフティーネットをしっかり用意しています
挑戦には失敗がつきものですが、失敗に手を差し伸べてくれる人はいないと思った方がいいです
努力・真面目・忠誠心を摺り込まれている自分をもう一度客観的に見つめ直すことも重要で、努力信仰は思考停止装置であることに早く気付くべきです
教育・研修担当から言わせてもらうと『自分が成長し能力が発揮しやすい環境を探すこと』が一番重要だと思います
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました