算命学 人生の羅針盤
ビジネス心理学

「叱る」は実は効果がない

吉祥寺事件

若手時代に西東京市に住んでいた頃、吉祥寺で5日間のヘルプ的な大仕事があり、私はその現場責任者でした

この辺は電車が全て東西にしか走っておらず、南北移動はバスになりますので東京で初めてバスに乗ります

寝坊したわけではありませんが、想像をしていたよりバスはノロノロ運転で大遅刻をやらかします

本社からは部長や本部長などが多くいる時にやらかしてしまいました

まだ、昭和入社の人達で部長などの上位管理職が占められていた時代でしたから「これはど激怒されるぞ!」と覚悟を決めて土下座覚悟で乗り込みました

サラリーマン人生であれほど背中に汗をかいたことはありませんでしたが、着くと責任者の部長が「ああよかった~来た!来た!ホント良かった!」と満面の笑みで迎えられます

その後は本部のお偉いさん方が「来た?おおおお来た!」と皆ニコニコしながら出迎えてくれます

大嵐に雷を想像していたので、ポカポカ日和に唖然とします

「お前の代わりの現場指揮官がいないんでどうしようと思ってたんだよ!」と安堵の表情に「意外に頼りにされてるんだな」という嬉しさもあり、馬車馬のように働いた5日間でした

後輩の大勢いる面前で怒鳴られていたらこれほどの力は出せませんでした

この日のことは自分の歴史の中では「吉祥寺事件」として刻まれ、北風と太陽の話のように自分の行動が変わるきっかけとなりました

人の心理というものはその多くが実体験から学習したものが多いです

「叱る」は依存症 

現在は新入社員研修で「これはパワハラ行為」「これは指導でありパワハラではない」としっかり教え込みます

同時に新入社員が入るころには「パワハラ行為でなくとも、このような行為は不快でやる気を奪う」とグレーゾーンを説明します

平成の長かった不況時代にハラスメント撲滅は大きく進歩し、昭和入社の人からは「若い頃散々やられたことを、自分が上司になったらできなくなった」とぼやく人もいます

精神科医の竹中直人さんによると「叱る」という行為は依存症だそうです

「ええ、叱るも依存症なの?」と世の親や管理職は引いてしまいます

親は虐待にあたる行為は理解しています

管理職ならパワハラにあたる行為は理解しています

竹中さんは「叱るはしちゃダメ」とは言っていません

幼稚園の子供が父親の飲んでいたお酒を飲もうとしたら「お酒を飲んじゃダメ!子供にとっては毒だから」と親は言います

会議に遅刻してきた部下に「君が遅刻したせいで○○のプレゼンができずにプロジェクトの取り掛かりが大きく遅れる」と上司が叱ります

「○○しちゃダメ」「それは○○だから」と叱るのはしてはいけない行為ではありません

叱るという行為は相手に変わってほしいから行います

「相手を変えよう」「変えたい」「変わるはずだ」という気持ちの表現が叱るという行為なのです

ただ「何度言ったらわかるの」「しっかりしろ」など余計な言葉が付きます

相手が思った通りに代わらないと叱り方は強くなっていきます

叱る方は「相手のことを想って言っている」と思い込みやすく、悪い行為だという自覚が芽生えにくいです

「俺は叱られたからこそ出来るようになった」という成功体験も叱るを正当化することに拍車を掛けます

「相手のことを想って叱る」「俺も叱られたからこそよくなった」が叱るを正当化し、次第にエスカレートしていき、依存症になるようです 

叱るはほとんど効果はない  

権力を持っている方が正解をつくり、罰を与えることが出来ます

この罰を与えることが快感になってしまう人も多いようです

正当化して感情のいら立ちをぶつけることができるとも見ることが出来ます

竹中さんは叱るという行為にほぼ効果はないと言います

叱られた人が学ぶのは、叱られた時にどうすれば良いのかだけだそうです

叱るという行為は

叱る側のニーズを強く満たす側面がある

叱らずにいられない依存的な状態に陥りやすい

と述べています

叱ると気持ちよくなってしまう要因として

自己効力感という報酬

処罰感情の充足という報酬

叱るの強化と慢性化

をあげており、叱るが常態化すると叱る人がより過激になると言います

叱られてディフェンス状態の人間は『理解力が半減する』そうで 「悪いことをした!どうすればいいのか」と学ぼうとしているのに理解力が半減してしまい学習できない状態ということです

「叱ってくれて有難かった」と思う場合は、叱ってくれた人が好きな人の場合です

好きでもない人に叱られてもほぼ学習効果はないということです

日本のこれからの未来を創る若者や子供たちは今や数も減り、非常に貴重な存在です

未来を創る世代をつぶさないためにも、もっと人間科学で多くを解明していくことは大切だと思います

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました