「目指すは高度なレベルの組織」は錯覚か
組織が大きくなるほどマニュアルは必要になっていきます
入社した時よりマニュアル作りは得意でした
採用の時も
営業現場の時も
多くのマニュアル作成を任されていました
支店長経験後は営業企画部で〈イベント企画〉〈宣伝販促〉〈マニュアル作成〉が私の主な仕事でした
営業本部は営業で名を挙げた人の集団
「ハイレベルな営業マニュアルを作るべき」
という考え方が圧倒的に多い集団です
社長の考え方は違います
「誰もが簡単にできる動きで標準化を目指す」でした
社長直轄の教育企画部との打ち合わせでは
「あなたの作成したマニュアルは上位2割のハイレベルの社員用である」
「誰もが〈同じ考え〉〈同じ動き〉〈同じ成果〉が出せるのがいいマニュアルだ」
と突っ返されます
営業本部は一貫してハイレベル主義です
「社長はモノ作り出身で営業がわかってない」
「教育企画部は事務方だろ!」
だんだん〈文官〉と〈武官〉の対立のようになっていきます
私の支店長時代は新入社員を毎年2~3名配属されていましたので
・新人でも動けるマニュアル
・ベテランは基本基礎に自分の味を加える
・写真を多用して文字は極力減らす
というものでした
「このようなマニュアルを作るなら あなたが本部に来た意味はない」
とまで教育企画部には言われます
(そもそもここは私の古巣です)
そうこうするうちにコンプライアンス室にまで呼ばれます
「誇張表現が多い!」
バブル経済崩壊後の長引く不況下の売上を必死に支える営業本部
たしかに誇張表現は多かったのは確かです
営業本部 ⇔ 教育企画部 ⇔ コンプライアンス室
バトミントンの羽のように 行くところで打ち返されます
高度な技術は「人を選び」「習得に時間を要する」
そうこうするうちに地方の研修で社長とばったり会います
この人は〈あらゆる戦争に詳しい〉軍師のような人です
「ゼロ戦の戦い方を知っているか?」
教育企画部時代「失敗の本質」の研修で耳タコで聞かされた話です
・とにかく旋回能力が異常に高く運動能力がずば抜けている
・ひらりと相手をかわし格闘戦が滅法強い
・一発当たれば大穴が開く大口径の20ミリ機関砲をもつ
・当時の日本のパイロットの腕は世界一
・アメリカ軍はF4Fだけでなく新型のF6Fでさえ『2機1組で戦う事』を徹底した
と話します
精度の高い機体&精度の高いパイロットだから圧倒的に強かった
と答えます
イギリスのスピットファイアなどもどちらかというと格闘戦型ですが
他国は「一撃離脱戦法」がほとんどです
高速で相手に近づき〈バリバリバリッ〉と一撃機関銃を浴びせて とっとと離れます
中世ヨーロッパの騎士が長い槍ですれ違いざまに相手を倒す戦術に似ています
素人が聞いてもアクロバット飛行の日本より〈安易な技術〉とわかります
社長も日本の撃墜王の話が好きでした
「日本のやり方は正しくない」と言われます
「えええ 昔あなたは『世界一の航空戦術』と絶賛してたじゃない」
「ハイレベルな戦術に問題あり」と言います
・格闘戦は非常に高度な技術を要する
・パイロットを育成するまでに時間がかかりすぎる
・20ミリ機関砲はあてるのに技術がいる
・ミッドウェーで多くのベテランパイロットを失ってから次を育てるのに時間がかかり過ぎた
・すべてが誰でもできる技術ではない
と説かれます
全員が同じ動きができる組織が強い
現場にいた頃は目の前に社員がいます
まだ入りたてのヒヨッコ社員
プライドはあるが まだまだ未熟な20代
頑固でやり方を変えないベテラン社員
「この子たちにこれは難しすぎるか・・・」
「この人達にいきなりこの変化は酷か・・・」
などが肌で感じることができます
本部に入るとこれが見えなくなります
周りは実績上げてプライドの塊のような人たち
現場の辛さ・難しさを肌で感じないまま〈思考〉だけが独り歩きしていきます
結論を言えば
複雑・高度にして徹底できないよりは
シンプルにして徹底した方が良い
ということです
料理にたとえて言えば
〈スパゲッティの作り方マニュアル〉を渡せば
新人は作りやすいミートソースを必死に作り
ベテラン社員は個性と工夫を加え
シーフードスパゲッティ・イカ墨スパゲッティ・和風スパゲティなどなど 自分のオリジナルを作り上げていきます
宮本武蔵の言葉の
一理に達すれば万法に通ず
ということです
「誰のために動いているのか」の自覚がないと「自己満足」な仕事しかできないということがよくわかりました
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました