障害者が9割のファンケルスマイル
前回、日本理科学工業の障害者雇用の話をしましたが障害者雇用に素晴らしい姿勢の会社は多く存在します
法政大学大学院教授の坂本光司さんは横浜にある株式会社ファンケルスマイルも紹介しています
化粧品や健康食品の通販会社ファンケルの特例子会社です
ファンケルが上場をした時に「自己資本比率も高くなったし、上場できたのは地域社会のお陰だから地域社会に貢献しよう」と相談し、どのような貢献がいいか話し合ったそうです
多くの社員が「私達の周りには障害を持った方が多くいますので、その人たちを幸せにできるようなことをしたらどうでしょうか?」と言ったそうです
『障害者の雇用を通じて彼らの自立を支援しよう』というのがファンケルスマイルの社員の発想でした
『障害者を守る』ではなく『障害者の自立を支援する』という姿勢です
ファンケルスマイルの障害者雇用率は90%ですから並みの社会貢献ではないです
なんのために我が社は存在しているのか
ファンケルスマイルには全国各地から「是非うちの養護学校から採用してください」という声が届くそうですが「申し訳ございません、一人しか採用枠がありません」と受験者を三人にしているそうです
ある時、養護学校から「三人の生徒を送るのでそちらで選んでください」と言われ
A子さん・・・軽度の障害
B子さん・・・中度の障害
C子さん・・・重度の障害
の3名を選考することになります
当然、父母も学校側も「軽度の障害のA子さんだろう」と思っており、C子さんは「どうせダメだろうけど一応チャンスを与えてあげよう」としか考えてなかったようです
社長が「C子さんは自閉症もあいまって無理でしょうから、軽度のA子さんにしよう」と言うと「A子さんB子さんはどこかの会社が採用してくれます!C子さんは我が社が採用しないと働く機会を一生失ってしまうかもしれません」と反論されます
「働く喜びと、働く幸せを知らないままC子さんは息を引き取ってしまいます!そういう方の為に我が社は存在してるんじゃないですか!」とC子さんを採用したそうです
全く頭の下がるくらい立派な社員はいるものです
バタフライエフェクト たった一人の社員の一言が・・
坂本光司さんの本に紹介されたエピソードで、現在多くの障害者を雇用しているある会社が最初に障害者を採用した時「社長があんなおかしな人間を入れるものだから、俺たちまでおかしな人間に見られちゃうよ!あんなことされちゃたまったもんじゃない」というベテラン社員の声をトイレで聞いてしまいます
社長はその社員を呼び出し「彼ら=障害者の前で謝らないのであれば、あなたには会社を去ってほしい!あなたの言動は人間として認めることが出来ない」と強く言ったそうです
結果的にそのベテラン社員は辞めていきます
わたしは採用企画部時代は新卒の大学生の採用の採用1課でしたが、定期採用は季節労働の側面もあるので冬の閑散期は採用2課の障害者採用を短期間手伝ったこともあります
障害者の合同説明会兼面接会場にも2回ほど行ったことがあります
採用した障害者の社員の配属する部署を決めるのが一苦労で、快く引き受けてくれる長とそうでない長がやはりいます
部署には必要人員が決められていますので「同じ人員1なら戦力的に優れた人が欲しい」という考えは当然あります
皆、会社の利益の為に懸命に働いていますから先に述べたベテラン社員のような人もいます
障害者責任者の社員も「快く思わない長の部署より、快く引き受けてくれる長の部署の方が障害者にとっても良い」と当然考えますので、どうしても偏りのある配属になりがちです
ただ一度配属して一緒に働けば次は快く引き受けてくれます
人間は心底腐った心の人はいないということです
日本理科学工業の太田さんも最初は「障害者の雇用なんて無理」と3回も断っています
私が合同説明会で採用した障害者を欠員があった部署の長に依頼した時「うちの部署を見ればわかるだろ!スピードと正確さが要求される仕事だから絶対無理!」と一刀両断されます
プロレスを観戦する仲間があり、両国国技館でその人に会った時に飲みに行き再度お願いします
「本当にダメだった時は配置換えしてくれるなら・・・」とかなりしぶしぶ受けてくれました
半年もすると「やっぱり一人じゃかわいそうだ!もう一人欲しい」と言ってきます
聞けば一緒にプロレスを見に行ったり、バーベキューもしているそうです
最終的には4人も引き受けてくれました
共に働けば共感する機会も増え、理解も増し、愛着も湧いてきます
バタフライエフェクト=バタフライ効果という言葉があります
『蝶の羽の羽ばたきという些細な変化が、遠い地でトルネードを引き起こす可能性がある 』というものです
正式な説明は『力学系の状態にわずかな変化を与えると、そのわずかな変化が無かった場合とは、その後の系の状態が大きく異なってしまうという現象』という意味です
日本理科学工業では「あの子たちを雇ってほしい・・」という社員の一言
ファンケルスマイルでは「重度の子ほど雇うべきだ」という社員の一言
その一言が社員全体の7割、9割という障害者を多く雇用する職場を創り上げます
組織はたった一人の社員の小さな行動で大きく変わることがあります
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました