マネジメント研修の教本だった名著
管理職の為のマネジメントの書籍は星の数ほどあります
若い世代も管理職はもとより、いいずれ管理職になる若い世代もマネジメントの学習は大切なので本は読むと思います
先日「この本いいぞ!」と友人に勧められたのが『失敗の本質 日本軍の組織論的研究』でした
「この本 まだあったんだ!」
これはまだ私が教育企画部・教育企画課の一スタッフだった頃 支店長・課長以上の「マネジメント研修」に使用された本です
この研修は社長自ら講師を務め、毎月一回一年間続いた研修です
社会科学面での旧日本軍の戦史研究の本で 6名の研究者による共著著です
原稿を持ち込んだダイヤモンド社も「タイトルが暗い」などと消極的だったらしいです
よく見ると初版は1984年(昭和59年)「そんな昔からあったんだ!」と驚きました
約30年にわたって読み継がれ 累計70万部のベストセラーとなり 再び脚光を浴びているようです
「お勧めの本?」と聞かれれば「地味で退屈な本でマネジメントに携わってないならやめといた方がいい」と言います
第二次世界大戦前後の「大日本帝国の主要な失敗策」を通じ日本軍が敗戦した原因を追究すると同時に 歴史研究(軍事史)と 組織論を組み合わせた 学際的研究書です
私の前のMG研修担当が「日露戦争の勝因」でした
「未熟で弱い者が考えに考えて強いものに勝った」
基本「勇気と希望の湧く」物語です
対して「強くなりおごった者が大敗する」物語の担当・・・
非常に暗く重い研修でしたが後になってえ「実際にマネジメントに活かせる内容」「得るものが多かった」と思える名著です
MG研修で学ばせたかったポイント
社長自ら陣頭指揮をとっただけあり、毎月の報告書も『実践してみて』という内容が増えてきます
私も今まで雲の上だった社長との対話も増えます
そもそも大企業の社長は近寄りがたい人が多いと思います いかにも頭脳明晰で沈着冷静な社長でした
ただリーダーが「何にスポットをあて議論するか」は重要で「安っぽい事象にスポットをあてる」経営者も多いです
リーダーの教養の差がよく出るのが教育内容です
この本は「日本軍の6つの失敗」にスポットをあて分析しています
今回は「私自身が心に残った考え方」を述べます
日露戦争時の日本海海戦で世界最強のバルチック艦隊を「T字戦法」で完膚無きに叩き勝利に導きます
この大勝利は日本人の脳裏に強く刻まれます
そこから生まれたのは「大艦巨砲主義」
「より大きく強い軍艦をたくさん配備すべき!」となります
山本五十六は真珠湾攻撃を航空機で行い 大打撃を与えます
それでも「止まっている艦艇だから飛行機で沈められた」と言われます
今度はマレー沖海戦で 日本海軍の陸上攻撃機は イギリス海軍の誇る 戦艦プリンス・オブ・ウェールズと 巡洋戦艦レパルスを撃沈します
「これからは航空機の時代だ!」と世界の戦術に対する考え方は変わります
それでも日本軍首脳部は「大艦巨砲主義」が抜けません
世界最大の戦艦大和・武蔵を造ります(三番艦信濃は空母に変更)
思い込みが強すぎたが故の失敗例です
米軍は 仲間内で議論を重ねて検討を進めた後に 目的をはっきりさせて動いていました
非常に理論的で「どこ・なぜ・どう」がしっかりしています
普遍的な出来事から結論を導き出す いわゆる演繹的な考えで戦略をたてていました
対する日本軍は 精神論が多い です
全体として戦いの目的が不明瞭でした。
精神論に偏りすぎ 曖昧な目的の戦術が多く 各作戦において統一性のない行き当たりばったりの作戦が多くなります
これ以降『支店長の月次報告書』も«精神論には青鉛筆で線が引かれ» «具体論には赤鉛筆で線が引かれ»るようになります
「倫理と数字」と「具体的動き」が重要であり
日本人が好む 強く・正しく・美しくまとめられた精神論は不要
が徹底されました
情報不足は負ける第一要素
ただの受講者でなく 企画する側で関わったことも大きかったです
負ける組織には共通点があります
情報不足
思い込み
慢 心
です
敵のことを知らな過ぎれば負けます
古い固定観念は通用しなくなったものが多くあります
敵を侮れば持てる力を出せません
日本軍の兵士は「組織に忠実で 頑強で 忍耐強い」と米軍に高く評価されています
なにか日本の従業員にも通づるものがあります
対して将校は「倫理性を欠き 教育レベルが低い」と低評価です
たまに下の社員から「管理職の教育をもっとしっかりやってほしい」という声が上がります
この声は組織にとって非常ベルだと思っています
「失敗の本質」は地味で退屈な本ですが スルメと同じで「見た目はイマイチ食をそそらないが 噛めば噛むほど味がある」名著だと思います
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました