戦いの昭和から衰退の平和へ
昭和を振り返ると「戦いの時代」だったということがよくわかります
ひと言でいえば「武力の戦争ではアメリカに負け、経済戦争ではアメリカに勝った時代」と言えそうです
前回に引き続き「好きなビジネスドラマ」を書き綴ります
言葉には言霊が宿ると言います
「平成」という元号は「平和に成る」という願いが込められてつけられたと言います
明治が「明るく治める」
大正が「大いなる正しさを求める」
昭和が「日=世界に向かって刀と口で向かって闘い、最後は和する」時代でした
平成は戦争にも巻き込まれず平和でしたが「平に成る」という感じで、昭和時代の戦いで築いた経済が平らになってしまいました
私もこの30年にも及ぶ縮小する日本での社会人時代を生きてきました
「明るい話題はないのかよ!」と呟く人の多い時代だったと言えます
ルーズベルトゲーム
青島製作所という製造業が舞台ですが、ここでは「野球部を存続させるか否か」がテーマです
いわゆる人員整理が焦点になります
高い技術を有しながら、低迷する日本経済の中で社員を守り切れなくなった会社の苦悩を描いています
苦境に陥り「どこを切り取るか?」となれば、生産性のない部活動となります
プロ野球でさえ、オーナーがコロコロ変わったのが平成という時代です
末端の現場と経営陣に挟まれた人事部の苦悩が個人的に同調できました
昭和の時代は雇えたが、平成になると一気にその雇用が重荷になるという企業は多かったと思います
沈まぬ太陽
映画でも好評でしたが、ドラマの方がより長く詳細に描かれています
某大手航空会社の真実をリアルに再現したドラマです
私も全国転勤を長くしていましたが、ここでは全世界をたらい回しにされます
超大手企業の人事の冷酷さが描かれたドラマです
「人として正しい生き方をしたい」か「間違っていても組織に従い安定を得る」の2者選択と言えます
組織が大きくなればなるほど、サラリーマンはこの矛盾と戦わなければなりません
それに翻弄される家族もリアルに描かれています
官僚たちの夏
こちらは戦後の経済発展中の通産省が舞台です
サラリーマンではなく、官僚の苦悩を描いたドラマです
急速に伸びる日本経済を支える官僚の働きがリアルに描かれています
日本人の意識は風化してきましたが、日本は敗戦国なわけです
イギリス人には「ウサギ小屋の働き中毒」などバカにされていた時代でもあります
とにかく自分も家族も犠牲にしてよく働いた時代です
高度成長期は死屍累々の犠牲の上に成り立っていると感じることができるドラマです
ハゲタカ
バブル期は我が世の春だったメガバンクが衰退した時代を表したドラマです
「腐った(弱った)日本を買いたたけ!」とばかりに攻撃されます
『家族的な社員を守る日本の経営』『義理人情を重んじてきた経営』などの日本的な経営の良さがもう通用しない時代だと感じさせるドラマです
〈官僚たちの夏〉が日本の経済が春から夏に向かう時代を表しているのに対し、〈ハゲタカ〉は秋から冬に向かう時代を表している気がします
古き良き時代の経営を守ろうとする経営陣と、合理的思考のアメリカとのしのぎあいが非常に面白かったです
しんがり
これはそのまま実名で山一証券の物語です
当時私のいた支店の隣が山一証券のビルだったので、連日長蛇の列でした
ビルの入り口はふさがれ「これは仕事にならんな」と諦めました
山一証券の方が「ご迷惑かけてすみません」と毎日来ます
外に並ぶお客様の怒号とそれを整理する山一証券の社員
「会社がつぶれてもこんなに苛酷に仕事をしなければならないんだ」と感じたのを覚えています
まさにリアルに倒産現場を目の当たりにしていました
社員も山一証券の顧客だったりして「有休下さい」とか
「うちの会社は大丈夫ですか?」など言ってきたりもしました
〈しんがり〉は会社の倒産の後始末を任せられた社員の苦悩を表したドラマです
「いかに苦境を脱したか」ではなく「いかに後始末をやりこなしたか」という珍しいテーマの物語です
他にも「華麗なる一族」「メガバンク」など好きなビジネスドラマはありますが、多くの企業で内外の戦いがそれぞれのかたちであり「自分だけが苦悩している」わけではないのです
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました