35歳転職限界説は既に風化している
平成に入ると人手不足から転職が活発になっていきます
デューダ・とらばーゆ・・・様々な転職の情報誌が発行され「嫌な会社にはいなくてもいいんだ!」「石の上にも3年はもう古いんだ!」という空気が強くなります
新卒一括採用の企業からすると転職者は「裏切者」という雰囲気でしたが、入社してから「しまったこんな会社だったのか!失敗した!」という若者には追い風になります
新卒とさほど変わらない年齢の若者で転職希望者を『第二新卒』と呼ぶようにもなりました
逆に気軽に転職できる環境は短期間で何度も転職を繰り返す若者を生みだしたりもしました
人は100%満足してその会社にいるわけではありませんし、転勤・上司が変わったなどの環境変化で退職を考えたりもします
そんな中で『35歳転職限界説』が叫ばれます
「若いうちは会社を変える」のはいいけど、いつまでも転職できるわけではないぞ!」で引かれたラインが35歳です
当時は求人に「〇歳まで」と記載できたので「35歳までが募集要項で最も多い」と言われ出したことから35歳が転職の限界とされたのです
当時の定年は55歳~60歳でしたから、70歳から75歳と伸びると予想されている現在とは違います
求人=企業側のニーズも、求職=個人のニーズも、コロナ禍によって大きく変わっています
35歳転職限界説は既に風化しています
ミドル世代の転職が活発化していく
リクルートエージェントによる「40代以上の転職決定者数推移」では2013年を1とすると2021年は3.48に達しているようで40代の転職は年々活発化しています
「あと10年ちょっとで定年」という昭和の40代と比べ「今が折り返し地点」という令和の40代は意識も違います
もう70歳の時点で働いている方は半分近くになっているご時世です
50代も5.86と5倍前後以上になっています
リクルートの藤原さんは「労働年数が伸びていく中で、今までは『転職35歳限界説』があり、企業側には『できるだけ色のついていない若者を採りたい』という意識がありましたが、そこはだんだん融解してきています」と説明していました
転職コンサルタントの橋本尚弥さんは「かつて企業は、終身雇用、職能制、年功序列、総合職、ジョブローテーションといった文化の中で、就職氷河期明けの人手不足を若手で埋めていましたが2013年以降の景気拡大によって、人材不足を35歳未満の人材で充足させることが難しくなっていた」
「合わせてジョブポスト制の浸透だったり、終身雇用の価値観が崩れたりしたことによって、即戦力採用がより進んだことと働く価値観の変化がそこに加わって、40代以上の転職が増えてきた」と説明します
「自社ではまかなえない人材のパーツを埋める」これのが中途採用のメカニズムです
既存事業をやっていればよかった時代から、何か新しいチャレンジをしようとしたときに、それができる人材が社内にはあまりいないので『専門性を持っている人を採りたい』というニーズが強くなってきています
製造工程での開発設計の経験が豊富な65歳の人材が20代社長が率いるロボティクス系のベンチャーに転職をしたという事例もあるそうです
自分が人生で「仕事を通して何を成し遂げたいのか=働く価値観」に、家族や親族とのプライベートな状況をすり合わせて『最適な環境を求める』という動きであるのも特徴です
コト軸で考えたときには「経験豊富なシニアを採ったほうがちゃんと事業が進む」という判断をした事例ですね
以前の転職マーケットの常識は崩れ、仕事選びの選択肢は広がっていると言えます
ミドル・シニアは変化対応に優れる人も多い
私が採用企画部にいた頃は隣は人事部でした
「人間一度座り心地のいい椅子に座ると降ろすのに苦労する」と何度か聞こえてきたので耳に残る言葉となりました
これは事実そうだと思いますが「人は年を取ると頑固になる」「歳を重ねると変化を嫌うようになる」は半分当てはまり、半分はそうではないと思います
経験を積むことにより、より変化対応力と変化創造力の増す人も多いです
「成長・競争・変化など極力避けて平穏に生きたい」と思うのも人生だし
「どんどんチャレンジして自分を高めていきたい」というのも人生で個人の選択する問題です
逆に50代になってから転職を繰り返しだす方も多いようで「頑固でプライドもあって馴染みにくいのでは?」と言われますが、転職自体勇気のいることで『新たにチャレンジする気概』は評価すべきだと思います
「100歳まで生きる時代」「80歳まで働く時代」となりつつあり、その中で40代・50代などはまだ『冒険したい年頃』なのかもしれません
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました