ソクラテスは論破で恨みをかう
ギリシャの3大哲学者と言えば、ソクラテス、プラトン、アリストテレス でしょうか
特に西洋哲学の父と称されるソクラテス は現代で言えば『論破王』として有名です
ソクラテスは「迷妄をなくし、誤りを見極めるためには議論を交わすのが最善である」と考えており「考え方の違う人との議論」を好んだと言います
町の広場で、知識人たちと議論を頻繁にしていました
ソクラテスが好んだ手法はまず相手に主張をさせてから、そう考える理由について問いかけをすることで、その知識人が持っていた自信は最終的にほとんど根拠のなかったことにしてしまいます
人間は『思いのほか知っていることは少ない』ということをわかってほしかったのが目的のようです
活発な民主主義のアテネでは、公の場で誰もが自由に意見を述べるという文化でした
ただ多くのの市民は議論を『勝つか負けるかのゼロサム・ゲーム』と見て楽しんでいたようです
ソクラテスは「自分は相手を打ち負かそうという気はない」ことを何度も強調していたようで、人々を安心させたりなだめたりをよくしています
アテネの人々に『間違えることは悪いことではなく、むしろ感謝すべきことである』とわかってもらいたかったようです
しかしソクラテスの論破している姿を「カッコイイ」と真似を始める若者が現れ「ソクラテスのせいで若者たちが堕落している」と罪に問われ、死刑を宣告されます
ソクラテスの最後は毒杯を飲み自らの命を絶つというものでした
論破は無駄に敵を作る
『人の自信の8割は根拠のないもの』と言います
また聞いている方も、自信たっぷりに言われると信じ込んだりしますので、間違ったことを行い悲劇を呼ぶこともあります
「じゃあ、ソクラテスのように根拠のないことを解き明かして真実をわからせるのはいいことではないか?!」というかもしれません
しかし『皆の前で論破された方は強く妬みをおぼえる』ということです
これは私も営業企画部時代に経験があります
何かを企画し、実行しようとすれば大きなお金が掛かります
コストは利益で回収しなければなりません
それなりにデータやシミレーションを準備して会議に臨みますが、浅はかな反対意見を述べる人は少なからずいます
そこで「貴方の意見は間違っている!だって○○」などと具体的に追い込むと相手はメンツをつぶされます
また論破している姿はカッコよく映るので浅い知識の社員を引き付けます
白黒はっきりする、明暗を分ける、正義と悪などのわかりやすい分断を人は好むようです
若いうちはこのようなことをやりがちで、後でしっかり先輩社員に諭されました
「表向きは従うが内心強い反発心と妬みの感情を持つぞ!」
「いざという時、力を貸してくれなくなる」
「ついてくるのは論破がカッコイイと思うへなちょこ社員だけになる」
正しいか否かではなく『相手のメンツをつぶす』はしてはならないことだということです
ビジネスでしてはいけないこと
議論と論破は似て非なるものです
ビジネスに生きる人は
「相手のメンツを潰すこと」
「恩を仇で返すこと」
「恥をかかせること」は絶対にやってはならないことです
恨みをかって無駄に敵を増やすことになります
何かあった時に仕返しされたり、窮地に陥った時に助けてくれなくなります
そもそも『力で押さえつけたものは、力がなくなったら反撃される』のが世の常です
ミスをした方と被害を受けた方
片方は強く主張でき、片方は何も言えない立場です
人は強者にまわった時に人間性が試されています
現代は情報民主主義の時代と呼ばれていますので、いたるところで『論破=メンツをつぶす』 行動を目にし、また人を引き付けます
メンツとは「面子」と書き
『自分が持っているプライドや世間に対しての絶対的な誇り』
『自信としているもの・世間や自分以外の人に合わせる顔・名誉』
などを意味しています
論破というものは一種の心を壊す害だと思います
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました