近年、内部留保は増え続けている
「給料は全然伸びないのに企業の内部留保は過去最高!なぜ社員に還元しない!」
という声をよく聞きます
「会社が苦しいならいいが、儲かってるのに社員には回さず貯めこんでばかりいる」という給料が伸びないことへの不満が内部留保に向かう場合もあります
内部留保とは、企業が持つ資産のうち、借入金や株主の出資や社外に流出する分を差し引いた残りの資産を指したもので「社内留保」とも呼びます
社員や労働組合は「内部留保せずに人件費の賃上げを要求する」一方、経営陣は将来に備えて内部留保を行いたいと考えています
「法人企業統計」に基づき、資本金10億円以上の約5000社の大企業(金融を除く全産業)のデータを1971年度から分析すると「内部留保は21世紀以降急激に増加してきた」ようです
内部留保を私たちの貯金と考えると、先行きが不透明だと消費を控え貯蓄に回す方が増えますよね
雨の日に傘を取り上げられたらたまったものではない
どこの会社でも「どうやって賃金をあげるか?」は検討していると思います
地元で社長をしている同級生に「なぜ内部留保をここまで優先するのか?」と尋ねたところ
「銀行がね、景気のいい時は『借りてください!借りてください!』で、景気が悪くなると貸し剥がしをしてくるんだよ!そりゃ借りなくても済むように内部留保にまわすよ!」と言います
「貸し剥がしにあって会社が倒産した」このような話をバブル崩壊期に耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか?
実際にバブル崩壊期には銀行の貸し剥がしによって資金繰りが厳しくなって倒産したという企業も多くあったと聞きます
この辺りから「銀行は晴れた日に傘を貸して雨の日に取り上げる」などと言われ始めます
「そりゃ給料は上げてあげたいよ!でも銀行の貸し剥がしにあった記憶が忘れられない!まずは会社が生き残らないと雇用が無いよ」
失われた30年から失われた40年に向かっている日本の先行きに対する不安感と、このところの原材料費の高騰などがあり「備えることが優先」という空気です
将来の不安に備える
私の場合も就活して最終的に選んだ会社は『自己資本比率89%・無借金経営』の会社でした
会社説明会で財務の社員が「弊社は7年間営業の売上が無くても社員に給料が払えます」に魅力を感じたのを覚えています
何があったかは知りませんが、社長が銀行に対していい感情を持っていませんでした
トヨタ自動車も「無借金経営」で銀行には口出しさせない社風です
1950年トヨタは倒産の危機に瀕し、銀行から融資を受ける代わりに豊田喜一郎の社長退陣と、1600名の解雇を行ったの苦い経験からです
これは「社員は家族であり、会社の宝である」と従業員を家族のように大切にする「温情友愛」を旨とした喜一郎にとっても、トヨタの役員にとっても痛恨の出来事だったようです
以来トヨタは危機に陥らないように努力を続けた結果が今の財務体質です
「借金をして業績を伸ばす」は至極当たり前で、戦後の日本はそれによりここまでの繁栄を築きました
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて企業の経常利益は減少したが、先行きが不安定となる中で設備投資などに慎重となった結果、内部留保が積み上がったとみる人もいます
セロトニンが少なく、国民の7割が不安症の日本では『将来に備える』ことが優先になってしまうのかもしれません
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました