どのような刺激で人は動くのか
人が行動に移るのは
①困難・苦痛から逃れる時
②快楽を得る時
と言われています
②より①の方が強いそうで「これをすると50万円得る」より「これをしないと50万円損する」方が動く確率は高いそうです
このような心理はマーケット分析などの「どのような商品・サービスが売れるか?」の一つの物差しとして使われます
世の中の企業は①お困りごと解決型か②快楽提案型に分けられます
この二つを競争しながら社会が動いているので、社会はだんだん多くの問題が解決できるようになり、楽しいものを増えていきます
医療の発展は身体の苦痛を解決し、交通手段の発展は身体の疲労と時短に貢献しています
音楽・食事・映像・ゲームなどは新しい快楽を次々に提案していきます
人を動かす「4つの方法」
ビジネス現場でいかに人を動かすかを考えたいと思います
⻘森⼤学客員教授の竹林 正樹教授によれば
行動経済学では人を動かすには大きく分けて4つの方法があると考えられているそうです
具体的にイメージするためにスーパーのレジの列で、来客に「前後の人と2メートルの間隔をあけさせる」という場面を考えてみましょう
1. 情報提供=正しい情報を与え、納得の上で動かす
「感染症対策のため2メートル間隔をあけてください」とアナウンスするなどして、情報を提供することで必要性を訴え、納得の上で人を動かす方法です
インフォームドコンセントの観点から、情報提供に基づく行動が最も望ましいですが、これだけではなかなか間隔をあけない人がいたりします
2. インセンティブ=褒美と罰で動かす
正しい情報提供でも間隔をあけない人には、ご褒美と罰を設定します
「2メートル間隔をあけた人は10%割引、あけなかったら10%加算」とすると、間隔をあける人が出てきます
多くの人はご褒美に釣られ、あるいは罰を避けるように行動します
3. 強制=力ずくで動かす
それでも間隔をあけない人には、最終手段として警備員が力ずくで間隔をあけさせます
これは強制力での行動であり本人の自発性はゼロです
避けたい行為であり、最終手段と言う感じですね
4. ナッジ=認知バイアスに訴求して動かす
例えば床に2メートルおきに足跡シールを貼ると、それに合わせて足を置きたくなるもので、これがナッジです
素直に動いてくれればいいのですが、それでも行動が変わらない場合は様々な手段で人を動かそうとしますが、そのデメリットも知っておく必要があります
逆効果になることも頭に入れておく
昔、コブラの被害に悩まされていたインドでは政府が「コブラを捕まえて、その死骸を役所に持ってきた者に報奨金を与える」とお触れを出したそうです
すると住民が報奨金目当てにコブラの飼育を始め、住民が報奨金目当てでコブラを飼っていると知った政府は当然報奨金を出すのをやめます
すると住民はコブラを育てる動機がなくなり、かといって殺すのも面倒なので放置してしまい、逃げ出したコブラは大いに繁殖し、お触れを出す前よりコブラが増えてしまったそうです
「害となるコブラを減らそう」という使命感より「報奨金で稼ごう」という行動が強く出てしまった例ですね
コブラを減らそうとしてしたことが逆にコブラを増やしてしまう・・・
インセンティブが意図しない行動を引き起こした例といえます
ナッジはどうなのか?
男性用の小便器に「壁に『一歩前に』と貼り紙をする」「床に足跡マークを描く」「便器の中に的(まと)シールを貼る」といったナッジがよく使われます
「トイレをきれいにつかいましょう」より「いつもきれいにお使いいただきありがとうございました」の方が使う側は気持ちがいいです
「汚すな!」という命令的なものより「いつもありがとう」の感謝の言葉の方が人は従おうとします
『小さなメッセージ1つで人の動きが変わる』という好例だと思います
本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました